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【愛知県東海市】太田川駅から歩いて聚楽園駅大仏を目指す一日観光モデルコース

中部国際空港と名鉄名古屋駅を行き来したことがある旅行者にとって、特急の停車駅でもある太田川駅は、聞き馴染みのある駅ではないでしょうか。この太田川駅のある愛知県東海市は、臨海部に工業地帯が広がる鉄鋼のまちとして有名ではあるものの、観光のために訪れたことのある方は少ないかもしれません。

ところが、一歩、太田川駅から踏み出してみると、四季折々に桜や紅葉が楽しめる公園が幾重にも広がり、まつり文化とそれにゆかりの深い寺社が点在するなど、秘められた魅力の豊かさに驚かされます。名古屋市内滞在中にプラスアルファの観光を楽しみたい場合、あるいは、セントレアでのチェックインまでに少しの時間を持て余した場合、ふと太田川駅で途中下車して、周辺の散策を楽しんでみてはいかがでしょうか。

今回の記事では、太田川駅から歩いて巡る一日観光のモデルコースをご紹介します。

太田川駅にある東海市観光物産プラザ

散策をスタートする前には、まず太田川駅北改札口出てすぐにある観光物産プラザをのぞいてみましょう。観光物産プラザには、このエリアの特産物を販売するショップやカフェスペースがあるほか、観光パンフレットも置かれているので、周辺散策のための情報を得ることもできます。

太田川駅北改札を出てすぐのところにある観光物産プラザ
一口サイズのかわいらしさが人気の「ふところ餅」

ショップでは、「ふところ餅」という一口サイズのお菓子が人気です。また、ここ東海市でしか購入できない珍しい商品として、えびせんべい「ゆかり」で有名な坂角総本舖の東海市限定パッケージが販売されています。

東海市だけでなく周辺エリアの特産品や土産物を購入することができる

坂角総本舖と尾張横須賀エリア

サクッとした食感が人気の坂角総本舖のゆかりは、セントレアや名古屋市内などで販売されており、中部エリアの定番土産となっています。ただ、その坂角総本舖の本店が、ここ東海市にあるということは意外と知られていません。せっかくの旅の土産品、「本店で買ってきたよ!」というエピソードも添えたいのであれば、ぜひ、本店にも足を伸ばしてみましょう。

坂角総本舖の本店の最寄り駅は太田川駅ではなく、隣の尾張横須賀駅になります。とはいえ、太田川駅からも1.5キロほどの距離なので、歩いていくことも十分可能です。

東海市の尾張横須賀にある坂角総本舖の本店

坂角総本舖は1889年、坂角次郎によってこの本店がある場所で創業されました。創業当時は本店のすぐそばに海岸線があり、近くで水揚げされたえびをこの地で加工していたそうです。

店内には創業者坂角次郎のパネルが飾られている
定番の人気商品、ゆかり

東海市にある本店では、購入した商品に、「大仏」「洋蘭」「山車」など、東海市のシンボルをモチーフにした限定掛け紙を掛けてくれます。お土産としていいですね。

東海市のシンボルが図案化された限定パッケージと限定掛け紙

この掛け紙にも山車が描かれているように、東海市はまつりの町としても知られています。坂角総本舖の本店のすぐ近くにも、まつりで披露される山車が収められた蔵を目にすることができます。

愛宕神社:尾張横須賀まつりはこの神社の例祭として行われる
山車は蔵のなかに大切に保管されている

蔵のなかの山車は、尾張横須賀まつり(毎年9月第4日曜日とその前日に開催)の際に町中に繰り出され、威勢のよい掛け声とともに勢いよく回され、回転の優美さが競われます。

毎年9月下旬に開催される尾張横須賀まつりの様子

太田川駅から大宮神社と弥勒寺へ

ふたたび太田川駅に戻って散策をスタートし、ここからは歩いて2つ先の聚楽園駅を目指しましょう。まず、太田川駅から10分ほど進んでいくと、大きな木々に包まれるようにひっそりとたたずむ大宮神社に到着します。

大宮神社の鳥居。境内には山車蔵も置かれている
樹齢1,000年とも言われる大樟

この大宮神社は、尾張横須賀まつりの翌週、毎年10月第1日曜日とその前日に行われる大田まつりの舞台であり、神社の境内にも山車蔵が置かれています。まつりのない日の大宮神社はとても静かな場所。樹齢1,000年とも言われる巨大な楠木の老木が訪問者を迎えてくれます。

毎年10月初旬に開催される大田まつりの様子

大宮神社から少し離れたところに見える小高い丘にある弥勒寺がつぎの目的地。弥勒寺は、日本に仏教を広めた高僧、弘法大師・空海にゆかりのある知多半島の寺(知多四国八十八箇所)のひとつです。

弥勒寺の仁王門
歴史を感じさせる創建時の像も安置されている

入口の仁王門に立つ真新しい金剛力士像は、2005年に愛知県で開催された愛・地球博で公開制作されたものです。門の裏側には、12世紀頃の作とされる創建時のオリジナルの金剛力士像も安置されています。

弥勒寺の本堂。右手に見える建物が宝篋印塔

弥勒寺で特徴的なのは八角形の宝篋印塔で、この塔を時計回りに3周まわると願い事が叶うと言い伝えられているそうです。

大池公園・加家公園を抜けて観音寺へ

弥勒寺から5分ほどのところには東海市の市庁舎があり、その市庁舎の向こう側に大池公園が広がっています。

近隣の人々の憩いの場として親しまれている大池公園
公園内には小さな動物園があり、ヤギや鳥類などが飼育されている

大池公園の広大な敷地には、子どもたちが楽しめる遊具のある広場や展望台のほか、小さな動物園(無料)まであり、ふだんは近隣の人々の憩いの場となっています。園内では四季折々の自然を楽しむことができ、愛知県内でも屈指の桜の名所として知られています。東海市出身の著名なイルミネーションデザイナーの監修の下で行われる夜桜のライトアップは圧巻です。

大池公園は愛知県内屈指の桜の名所としても知られている
5月下旬〜6月初旬開催の花しょうぶまつりも人気

市内を歩いていると、ひとつひとつの公園の広さに驚かされることでしょう。大池公園も十分に広いのですが、そこから大窪公園、加家公園と公園がつながり、2キロ以上に渡る散策路が造られています。

かわいらしいオブジェが飾られている加家公園
加家公園の展望台から眺める臨海部の工場地帯

豊かな自然を感じながらの心地の良い散策路。途中には、この地で生まれ育った儒学者、細井平洲のモニュメントが展示されています。江戸時代に活躍した平洲は、著名な儒学者として名を馳せ、日本の近代化に貢献した明治維新の志士たちにも大きな影響を与えたと言われています。

細井平洲の業績が記されたパネル
観音寺の境内にも楠木の巨木が生い茂る

そんな平洲が幼少期に学んだ寺が、加家公園の先にある観音寺です。観音寺も知多四国八十八箇所のひとつで、境内では大宮神社のものに引けを取らないような巨大な楠木が勢いよく枝を伸ばしています。

平洲が学んだ観音寺の本堂。海からの心地よい風が吹き寄せる
毎年8月に開催される奇祭、観音寺提灯まつり

ふだんは静かなお寺ですが、毎年8月10日の夜になると、奇祭として知られる「観音寺提灯まつり」が開催されます。まつりでは、厄除けを祈願して護摩が焚かれたあと、竹に飾られた火のついたままの提灯を人々が一斉に奪い合います。

とまと記念館で限定ランチ

散策の途中、もしタイミングがあえば、ぜひとも寄っておきたい場所があります。

美しい外観が目を引くとまと記念館

東海市は、トマトケチャップや野菜ジュースで世界的に有名なカゴメの創業の地であり、創業者である蟹江一太郎の記念館が建てられています。このおしゃれな洋館は、いまは「とまと記念館」として市が管理し、市民の健康づくりを推進する拠点として活用しています。

定番メニューのオムライス
月替りメニューの焼きカレー

とまと記念館では、木・金・土のみ、ランチ営業をしています。健康をつよく意識して考案されたランチメニューは、1日に必要とされる野菜の大部分を摂取できるように工夫されており、ヘルシーなのはもちろん、美味しくて安くて(野菜料理3種盛り、デザート、コーヒー付で800円!)大満足できるのは間違いありません。電話予約が必須なので、営業時間を確認の上、ぜひ問い合わせてみてください。

凝った内装も必見。2階には蟹江一太郎にまつわる展示もある
地域の元気なシニアによって運営されている

東海市のシンボル、聚楽園大仏と嚶鳴庵へ

あらためて散策コースに戻り、最後の目的地となる聚楽園公園を目指しましょう。

東海市のシンボルである聚楽園大仏

聚楽園公園は、20世紀初頭、名古屋の実業家、山田才吉によって豪華な料理旅館が営まれていた場所になります。才吉が心血を注いで園内に造立した大仏は、日本で最初に作られた鉄筋コンクリート製の大仏です。高さは18.79mもあり、有名な奈良や鎌倉の大仏を凌ぐ大きさとなっています。

秋には約500本のもみじが赤く染まる
まつり期間中は聚楽園大仏も鮮やかにライトアップされる

公園の広い敷地では、聚楽園大仏だけでなく、豊かな自然を楽しむことができ、とくに約500本ものもみじが色づく秋のもみじまつりには多くの人が集まります。もみじまつりでは、大仏も鮮やかにライトアップされます。

かつての料理旅館をイメージした嚶鳴庵
美しい日本庭園のなかに本格的な茶室が設えられている

太田川駅から聚楽園公園まで、歩くだけであれば2時間程度。のんびりと観光しながらだと3〜4時間ほどの時間がかかります。散策の最後は抹茶と和菓子で一息ついてみてはいかがでしょうか。

室内から庭園を見ながらの呈茶は至福のひととき
季節にちなんだ和菓子が提供される

呈茶がいただけるのは、聚楽園公園内で、かつての料理旅館が立っていた場所にある嚶鳴庵です。美しく手入れされた日本庭園を眺めながら、抹茶と季節の和菓子をいただく時間は、東海市を巡る旅の忘れられない一コマになることでしょう。

聚楽園駅とその向こうに立ち並ぶ製鉄工場群
聚楽園駅のホームを見上げると聚楽園大仏の姿が目に入る

聚楽園公園から5分ほどなだらかな坂道を下っていくと、ゴールの聚楽園駅に到着します。小さな駅舎のすぐ向こうに、巨大な製鉄工場が立ち並ぶ光景が印象的でした。

おわりに

今回の記事では、観光目線での東海市の楽しみ方をご紹介しました。

散策コースは一年を通して楽しめますし、春の桜、夏の花火大会、秋の紅葉といった、季節ごとのイベントも、訪れてみる価値があります。名古屋とセントレアの間に位置し、特急で名鉄名古屋駅から太田川駅まで約15分、太田川駅から中部国際空港駅まで約20分というアクセスの良さも魅力的です。ぜひ一度、太田川駅で途中下車し、散策に出かけてみてください。

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