| セントリップ・ジャパン編集部
名古屋から行く中部エリアの13名城を巡る旅
名古屋を中心とする日本の中部エリアは、戦国時代を終わらせ、天下統一に貢献した三英傑と言われる武将、すなわち、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の生誕の地であり、戦国時代の中心地であった。そんな中部エリアには、日本の国宝5城のうちの3城が集中しているほか、個性ある名城や城にまつわる興味深いエピソードが無数に点在している。
この記事では、日本の侍文化や城郭建築のファンに向けて、中部エリアでおすすめの13名城とその巡り方を紹介する。
目次
名古屋とその周辺
名古屋城(愛知県名古屋市)
まず最初に紹介するのは名古屋城。名古屋城は約500年前に築城され、以来、名古屋の中心であり続けている。天守閣最上部に置かれた巨大な「金のしゃちほこ」は名古屋のシンボルになっている。名古屋駅からも15分ほどで行くことができ、アクセスが良い(最寄りは地下鉄「名古屋城駅」)。
城としての評価も高く、「大阪城」「熊本城」と並んで「日本三名城」と呼ばれることもある。近年、藩主の居住地であった本丸御殿が大規模に復元され、見どころが増した。表書院(藩主が来客と会う部屋)のきらびやかな装飾は目をみはる美しさだ。
城内では、織田信長や服部半蔵など、名古屋城にゆかりのある著名な武将や忍者に扮した役者に会うことができる(格好も振る舞いも本物そのもの!)。記念写真にも気軽に応じてくれる。
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国宝犬山城(愛知県犬山市)
続いて、名古屋から少し北、名古屋駅から名鉄犬山線で30分ほどのところにある犬山駅に向かおう。犬山駅を降り、賑やかな「本町通り」を抜けていくと国宝犬山城に着く。
犬山城は1537年に建てられ、天守は日本最古の様式と言われている。木曽川のほとりの小高い山の上に建てられた天守からの眺めはまさに絶景。あまりの高さに高所恐怖症の人は足がすくんでしまうかも!?
城下町の賑わいは中部エリアでも1,2を争う。インスタ映えするスイーツ店やレストランが立ち並んでいる。人力車や着物の着付け体験などもできる。犬山城の麓にある三光稲荷神社では、可愛らしいピンク色のハートの絵馬に願い事を書き記すことができる。
岐阜城
岐阜城へは、名古屋駅からJR東海道本線もしくは名鉄本線で岐阜駅まで約30分、そこからバスもしくはタクシーに乗って10分ほどで到着する。
岐阜城は標高329mの金華山の頂きに築かれた難攻不落の城で、この城を落とした織田信長が天下統一の拠点とした。山の麓からそびえ立つ山城の天守を見上げると、いかにも攻めづらそうだ。かつて信長も歩いたかもしれない天守への険しい山道は1〜2時間ほどで登ることができるので、体力に自信がある場合はぜひチャレンジしてほしい。ちなみに、ロープウェイを利用すれば約4分で頂上に着く。濃尾平野の真ん中に立つ天守からの眺めは圧巻!とくに夕陽が美しい。
なお、大人1人5,000円で、様々な特典付きで名古屋城・犬山城・岐阜城を巡ることができる切符も販売されている(名鉄お城めぐりきっぷ 2DAY周遊Dコース)。
岐阜からさらに北へ
郡上八幡城(岐阜県郡上市)
岐阜駅からバスまたはレンタカーで1時間ほど更に北に進んでみよう。このあたりは標高が高く、山間の地形を活かした山城の名城が多い。なかでも一度は訪れておきたいのは、日本の著名な小説家、司馬遼太郎が「日本で最も美しい山城」と称した郡上八幡城だ。紅葉で山が赤く染まる秋、雪に埋もれる冬など、訪れる季節によって様々な表情を見せてくれる。
城下に広がる城下町も美しい湧き水の町として知られ、名水で作られる蕎麦など、食べ物も美味しい。夏には徹夜で踊り明かす「郡上おどり」も開催される。郡上おどりにちなんだ本染めなどの伝統工芸品も多く、土産物として購入することができる。
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越前大野城(福井県大野市)
ドライブが好きであれば、郡上八幡からもう少し足を伸ばしてみるのもいいかもしれない。美しい九頭竜湖を眺めながらかつての美濃街道(現在は国道158号線)の一本道をひたすら進んでいくと、やがて越前大野の町に着く。
越前大野の町の中心部に建つ越前大野城は、「天空の城」とも呼ばれ、晩秋から春にかけて、気象条件が揃うと、雲海の上に城が浮かび上がる幻想的な光景を見せてくれる。城下には、「旧内山家」や「旧田村家」などの武家屋敷を見学できるほか、古くからの城下町で発展してきた酒蔵や醤油蔵が多く、試飲や醤油づくりの体験なども楽しめる。
名古屋から中山道に沿って松本方面へ
岩村城(岐阜県恵那市)
名古屋からSamurai Trailとして人気の中山道木曽路の入口である馬籠宿を目指す場合、名古屋駅からJR中央本線で中津川駅に向かい、そこからバスまたはタクシーを利用する。城巡りの旅が目的であれば、中津川駅の2つ手前の恵那駅で降り、明知鉄道という趣あるローカル列車に乗って岩村城を目指してみよう。
岩村城は、戦国時代、織田信長の叔母である「おつや」という女性が城主を務め、善政を敷いたと言われている(日本史上において女性が城主を務めたケースは少ない)。いまは石垣の遺構を残すのみだが、山の山頂に築かれた巨大な石垣群は一見の価値がある。
苗木城(岐阜県中津川市)
苗木城は岩村城から直線で10kmほどしか離れていない場所にある。苗木城は天然の巨岩の上に築かれた山城の跡で、かつての天守跡には当時の柱穴を利用して築かれた展望台がある。巨岩と石垣が織りなす景観が世界遺産のマチュピチュに似ていると話題になり、SNSでも人気になっている。
岩村城と苗木城は中山道の宿場町、馬籠宿とも近い。宿場町巡りや街道歩きと併せて訪れるのも楽しい。
国宝松本城(長野県松本市)
中津川駅から特急しなのに乗ると、約1時間15分で国宝松本城のある松本駅に着く(名古屋駅から直接行く場合には約2時間)。
日本の城のシンボルと言えば「天守」であるが、天守の建物が残るのは12城のみであり、そのうち壮大なスケールの五重の天守をもつのは姫路城とこの松本城しかない。松本城は壁面の白と黒のコントラストが他に類を見ないユニークな特徴をもつ城で、城好きには必見の場所だ。運が良ければ、侍や忍者、姫に出会えることもある。
どの季節も人気だが、とくに春の桜のシーズン、雪の積もった険しい山々を背景に、敷地内に桜の咲き誇る松本城の様子は本当に美しい。冬季には松本城の城壁をキャンパスに見立てたプロジェクション・マッピングも行われている。
名古屋から西へ
伊賀上野城(三重県)
名古屋の西方にも名城が多い。まずは忍者の町として有名な伊賀市へ。伊賀市へは電車での移動に時間がかかるため、レンタカーもしくは、名古屋駅のバスセンターから出ている高速バス(伊賀忍者ライナー)の利用が便利だ。
伊賀上野城は、築城の名手と言われた戦国武将、藤堂高虎によって築かれた名城で、大阪城と並んで日本一高いと言われる石垣が見どころのひとつ。この石垣は、かの黒澤明監督の映画「影武者」のロケ地としても使われた。忍者観光の拠点となる伊賀流忍者博物館もじつはこの伊賀上野城の敷地内にある。伊賀や甲賀の忍者の里巡りと併せてぜひ訪れてほしい。
国宝彦根城(滋賀県)
国宝彦根城は日本一の湖、琵琶湖のほとりに建つ。名古屋から近く、公共交通機関を利用する場合、東海道新幹線と在来線を乗り継げば約35分で最寄りの彦根駅に着く(忍者の里、甲賀市から車で向かう場合は1時間ほど)。
彦根城は、現存12天守のうちのひとつである国宝天守をはじめ、独特な形状をした太鼓門櫓や周囲に張り巡らされた堀など見どころが多彩だ。琵琶湖の水を引き入れて豊かに水を蓄えた堀では屋形船が定期運行している。普段とは違う角度から城の雰囲気を味わえるのでおすすめだ。彦根城のマスコットキャラクター「ひこにゃん」も人気がある。庭園である「玄宮園」も素晴らしい。
名古屋から東へ
岡崎城(愛知県岡崎市)
名古屋から東には江戸時代を築いた徳川家康に縁の城が並ぶ。徳川家康は2023年、NHKの大河ドラマ「どうする家康」の主人公として日本国内での注目度が高く、その公開にあわせる形で関連する観光施設もリニューアルされている。
まずは岡崎城。岡崎城は1543年に徳川家康が生誕した城であり、1959年に再建された三層の天守を中心に、公園として整備されている。2023年1月には改装され、デジタルサイネージなど最新技術を駆使した展示により、過去の城下町や城郭の雰囲気を体感できるようになっている。岡崎城の周辺は中部エリア屈指の桜の名所としても知られている。
浜松城(静岡県浜松市)
続いての浜松城は1570年に徳川家康が難敵である武田氏との戦いに備えて拠点を移した城だ。この「浜松」という地名も家康によって名付けられた。
家康はこの地で武田氏に手痛い敗戦を喫した。敗れた家康は、自らを戒めるために敗戦直後の姿を絵師に描かせたと言われており、浜松城にはその有名な肖像画「しかみ像」の立体復元像が飾られている。この他、後に江戸時代に入ってから整備された16世紀後半の遺構が多く残されており、見どころが多い。
駿府城(静岡県静岡市)
最後は静岡市にある駿府城へ。戦国の世を終わらせ、江戸幕府を開いた家康は、早々に将軍職を子の秀忠に譲って引退したあと、この駿府城に拠点を移した。ここで晩年の約10年間を過ごしたあと、1616年に最後の時を迎えた。
駿府城周辺は駿府城公園として整備されており、門や二の丸の櫓が復元されているほか、晩年の家康の様子を表す銅像も立てられている。城内の広場から晴れた日には雄大な富士山が一望できる。家康も晩年はこの角度から同じ富士山を眺めていたのかもしれない。
おわりに
日本の城はどれも似ているようで、一つ一つ個性があり、それぞれ見どころが異なっている。いくつかの城を巡り、見比べることではじめて気づく魅力も多くあるはずだ。侍文化の集積地である中部エリアを巡り、より深く日本の歴史や文化を感じてほしい。
※この記事は、外国の方向けに書かれた記事です。少し違う目線で書かれている部分も含めてお楽しみください。