| セントリップ・ジャパン編集部
【福井県大野市】名古屋から行く越前の城下町のおすすめ観光スポット
天空の城としても有名な越前大野城が見守る城下町、福井県大野市。北陸の小京都と言われ、日本的な歴史情緒あふれるこの町には、近年、あらたなアイディアによって、次々と「映え」なフォトスポットが誕生し、幅広い世代で人気が高まっています。この記事では、越前大野城と武家屋敷を中心に、大野市の名水と醸造文化に触れるスポットをめぐるまちなか観光のおすすめコンテンツを紹介します。
目次
越前大野城
「越前大野城」は、ぐるりと高い山々に囲まれた大野盆地の中心部にあり、大野市の街全体を見渡す高さ249mの亀山の頂に立っています。この城は、戦国時代、織田信長の重臣、金森長近によって築かれ、その後、江戸時代には譜代大名である土井氏の居城となりました。現存する天守は昭和43年(1968年)に絵図などを元に旧士族の荻原貞氏の寄付により再建されたそうです。
晩秋から春にかけて街全体が雲海に包まれると、高台に築かれた越前大野城だけが浮かび上がる幻想的な景観が現れることから、「天空の城」として人気を博しています。越前大野城の西側約1kmのところにある戌山が天空の城の撮影スポットになっており、幻の絶景を写真に収めようと多くのファンが足を運んでいます。ただ、天空の城が現れるのは年に10日前後。貴重な絶景です。
でも、越前大野城の魅力は天空の城だけではありません。いくつかのルートがある天守への道のりは心地よいハイキングが楽しめ、春は桜の、秋は紅葉の名所として知られています。
また、盆地の中心にポツンとそびえる亀山の山頂に築かれていることもあり、天守からの眺望も抜群! 山々に囲まれた大野市の街並みを360度見渡すことができます。
天守は後世に再建されたものですが、「野面積み」という自然石をそのまま積み上げる技法で築かれた石垣などは築城当時の雰囲気を留めており、城好き・歴史好きに刺さるポイントも盛りだくさん。
天守に続く最後の石段は「武者登り」と言われ、城の上で守る側からは下から攻めてくる敵の様子が丸見えになり、逆に、攻める側からは上で守る敵の様子が見えづらい構造になっているそうです。
城の敷地内には大野藩の第七代藩主の土井利忠公の像が立てられています。土井利忠は、藩の特産品を各地で販売する「大野屋」を開き、西洋帆船「大野丸」を建造して商品を運ぶなど、革新的な藩政改革によって窮地に陥っていた藩の財政を建て直した名君として知られています。城の麓には土井利忠を祀った神社、柳廼社もあります。
武家屋敷 旧内山家:美しい庭園と季節で変わるフォトジェニックな障子
越前大野城のある亀山を下り、柳廼社を抜けて城下町に降りていくと、歴史的な風情の感じられる街並みが広がっています。城の近くには大野藩を支えた重臣たちの武家屋敷があり、内部を見学することができます。
代表的な武家屋敷が「旧内山家」。藩主である土井利忠を兄弟で支えた内山氏の偉業を偲んで復元された屋敷です。
旧内山家は、来客をもてなす1階の客間の天井が高く設計され、その分、2階の居室空間が狭められています。武家ならではの気遣いが感じられる建物で、内部から眺められる苔の美しい日本庭園も見どころの一つです。
母屋から続く離れの数寄屋風書院は大正期に増築されたもの。季節ごとに装いを変え、春〜秋には夏障子が、冬にはカラフルな絵障子が登場し、フォトスポットとして人気を集めています。涼し気な夏障子には窓が設けられ、室内にいながら越前大野城の天守を望むことができます。
武家屋敷 旧田村家:SNS映え間違いなしの人気スポット
旧内山家から北に200mほど進むと、もう一つの武家屋敷、「旧田村家」があります。
旧田村家は江戸時代末期(19世紀初頭)に農家を移築し、武家住宅に改築した屋敷で、当時の武家の住まいをいまに伝える貴重な施設です。庭には越前大野城への敵の侵入を防ぐために築かれた土塁の一部も残されています。
文化財としても貴重な旧田村家ですが、いまは「風車の武家屋敷」として、北陸エリアを代表するフォトスポットになっています。アプローチから屋敷内まで所狭しと飾られている約2,000個もの風車は圧巻! 華美を排して質素な色味で築かれた武家屋敷とカラフルな原色の風車とのコントラストが鮮やかで、建物全体が現代アートのようです。
屋敷に入って風車棚の前に座ると、カラフルな風車を通して優しく入り込む光のなかに人物のシルエットが浮かび上がり、印象的な写真が撮影できます。小道具として風車を購入することも可能です(1個100円)。ぜひお気に入りの一枚をSNSで発信してください。
越前おおの結ステーションと結楽座
「越前おおの結ステーション」はまちなか観光の拠点となる施設で、越前大野城や城下町を巡るのに便利です(無料の駐車場も完備)。ちなみに、「結」は大野市のブランドコピーで、人と人とが互いに助け合う日本の伝統的な仕組みや、人々が行き交う場を表現しているそうです。
結ステーションには、武家屋敷を模した無料休憩所や、大野市の特産品を販売する「結楽座」などが併設されています。結楽座の回廊には、期間限定で約200枚の手ぬぐいが飾られており、こちらもフォトスポットになっています。
野村醤油と大野名物「醤油カツ丼」
街中の至るところに湧水地があり、名水の町としても知られる大野市。その名水を活かした酒、醤油、味噌などの醸造業も歴史的に栄えてきました。城下町を散策しながら、醸造の老舗を訪ねることもまちなか観光の楽しみ方としておすすめです。
いまは醤油作りを営む「野村醤油」は、江戸時代には桶作りを生業としており、明治初期(19世紀後半)にその桶を使って醤油・味噌の醸造をはじめたそうです。
日本の食文化にとって欠かせない醤油ですが、意外とどうやって作られるのか知らないことも多いのではないでしょうか。野村醤油では、そんな醤油について親子で学べる場として「体験蔵 重右エ門」を2016年にオープンしました。
体験蔵では、醤油の醸造工程についてのレクチャーを受けられるだけでなく、もろみをかき混ぜて発酵を促進する櫂入れ作業などを体験することができます。実際の醤油作りには1年以上の時間がかかるのですが、ここでは、瓶詰め、ラベル作りなど、簡易的にオリジナルの醤油作りを楽しめます(※ 体験蔵は2022年11月現在休業しており、2023年春以降再開予定です)。
この大野市の醤油を使い、特色ある地域食を生み出そうと開発されたのが「醤油カツ丼」です。元々、福井県のグルメとして「ソースカツ丼」が知られていましたが、より大野市らしさを追求するなかで誕生したそうです。
大野市の醤油カツ丼の条件は「カツと野菜を盛り」「福井県内産の醤油ベースのタレを使用する」こと。誕生から10年以上が経過し、今ではすっかり大野市の定番グルメとして定着しています。
醤油カツ丼は市内の多くの飲食店で提供されていますが、この日の取材で伺ったのは老舗のお魚屋さんがリニューアルして誕生した「うおまさcafe」。魚料理が自慢ということもあり、豚ではなく、鯖を使った醤油カツ丼をいただくことができました。
城下町の酒蔵めぐり:南部酒造場
人が集まる城下町で、豊かな名水が湧く、と来れば、酒造りが発展しないわけがありません。大野市の城下町には、半径数百メートルの範囲内に、南部酒造場(「花垣」)、宇野酒造場(「一乃谷」)、真名鶴酒造、源平酒造、という4つの酒蔵が集まっています。
そんな酒蔵の一つ、「南部酒造場」は「花垣」の銘柄で知られており、碁盤の目のように通りの並ぶ大野市の城下町にあって、古い街並みがもっともよく残り、朝市の賑わいも見せる七間通りに面して店舗を構えています。大野市の伝統的町家として登録有形文化財に指定された主屋はとても見応えがあります。蔵の内部は一般公開されていませんが、店舗内では江戸末期に描かれた襖絵が見学することができ、その歴史を感じることができます。
南部酒造場では、日本酒の熟成古酒の製造に力を入れており、めずらしい30年熟成の古酒の商品化も間もなくはじまるとのことで注目を集めています。店頭でしか買えない商品もあるのでぜひ訪れてみてください。
他の酒蔵も南部酒造場からすべて徒歩圏のところにあるので、各蔵での試飲を楽しみつつ、大野市の街並みの風情を感じてみるのもいいでしょう。
名古屋から越前大野への交通アクセス
名古屋から越前大野へのアクセスはクルマの利用が便利です。東名高速道路の名古屋ICから一宮JCTを経由して東海北陸自動車道に入り、白鳥ICで降りた後、国道158号を通って約2時間〜2時間30分です。この記事で紹介したコンテンツは、すべて結ステーションから徒歩圏内にあります。まずは、無料駐車場のある結ステーションを目指すと良いでしょう。
公共交通機関を利用する場合、名古屋駅から北陸本線特急、もしくは名鉄バスセンターから高速バスで福井駅に移動し、そこからJR越美北線に乗り、越前大野駅で下車します。JRを利用する場合は約3時間10分、高速バスを利用する場合は約3時間50分です。
おわりに
名古屋からクルマで大野市に向かう途中には、大野市と同じく美しい城下町散策が楽しめる郡上八幡や、流しそうめんと白山信仰の文化に親しめる白鳥があります。また、白鳥ICから大野市に向かう国道158号沿いには、様々な湖上アクティビティができる九頭竜湖や化石発掘体験ができるホロッサがあります。個性的な周辺の観光地と併せて大野市を訪れてみてください。