| セントリップ・ジャパン編集部
【寸又峡 夢のつり橋】川根本町の絶景スポットと茶畑テラス巡り
寸又峡にかかる「夢のつり橋」は、日本でもっとも美しいつり橋と言われ、トリップアドバイザーの「死ぬまでに渡りたい世界の徒歩つり橋ベスト10」にも選出されています。
このつり橋を渡るためには、高速道路とあまり整備されていない山道を長い時間かけてドライブして行くか、あるいは、いくつかのローカル鉄道と路線バスを乗り継いで行くか(そのローカル鉄道の旅も楽しいのですが)、いずれにしても、長距離・長時間の移動が必要になります。それにもかかわらず、夢のつり橋には多くの観光客が訪れ、ホリデーシーズンになると、つり橋を渡るのに3時間以上待つこともあるそうです。
そんな夢のつり橋が架かるのは、静岡県の川根本町。「日本で最も美しい村」連合に所属する美しい山間の地域です。この記事では、夢のつり橋を中心に、川根本町を一日観光で巡る3つの楽しみ方をご紹介します。
寸又峡にかかる日本一美しい吊橋、夢のつり橋を渡る
夢のつり橋
駐車場から夢のつり橋までは30分ほどのハイキングコース。この区間はとくにアップダウンもなく、心地よい散策が楽しめます。
しばらく歩き、コース途中にあるトンネルを抜けると一気に視界が開け、眼下に深いエメラルドグリーンの湖面と、そこに掛かるつり橋が見えてきます。
つり橋の全長は90m。森と湖の美しい色彩に囲まれ、真っ直ぐに対岸へと伸びていくつり橋の光景は、現実感が沸かないほど美しく、思わず見とれてしまうことでしょう。
つり橋を一度に渡れる人数は10名まで。SNS映え間違いなしの絶景スポットのため、天気の良い休日や紅葉シーズンは大渋滞が予想されます。少しでも落ち着いて撮影したい場合は平日の早めの時間帯がおすすめです。
ちなみに、夢のつり橋は基本的には一方通行です(工事等で変更の場合あり)。つり橋を渡ったあとは引き返すことができず、300段以上の急階段を登り、飛龍橋という別の橋を経由して寸又峡温泉に戻っていくことになります。帰りは1時間ほど歩くことになるので、できるだけ歩きやすい靴で訪れるようにしましょう。
手造りの店 さとう
夢のつり橋に向かうハイキングコースの入り口には、1962年から営業している老舗のみやげ物店「手造りの店 さとう」があります。お店の外観も店内もとってもレトロな雰囲気。朝早くから営業しているので、つり橋散策の際に立ち寄るのに便利です。
わさび蕎麦や山菜そばの他、さとうオリジナルの「いも餅」も人気。注文すると揚げたてを提供してくれます。この他、「夢のつり橋サイダー」や「やまめの甘露煮」など、寸又峡ならではの商品も販売しています。
寸又峡温泉
夢のつり橋に向かう際に利用する寸又峡温泉駐車場の周辺には、趣のある温泉旅館が立ち並んでいます。寸又峡温泉は湯質の評価も高く、つるつるの肌になることから「美女づくりの湯」と言われているそうです。
それぞれの旅館は宿泊だけでなく、日帰り入浴やランチ利用のプランも充実しています。タイミングがあえば気軽に利用してみると良いでしょう。
トロッコ列車に乗って秘境の絶景、奥大井湖上駅へ
夢のつり橋に続いては、もうひとつの絶景スポットである大井川鐵道の奥大井湖上駅へ向かいましょう。夢のつり橋からクルマで奥大井湖上駅の展望所に向かうこともできますが、千頭駅でいったんクルマを停め、風情あるトロッコ列車に乗って向かうと、車窓からの絶景も楽しむことができます。
大井川鐵道 千頭駅
寸又峡温泉駐車場から大井川鐵道の千頭駅まではクルマで約30分です。
大井川鐵道には、金谷駅と千頭駅を結ぶ「大井川本線」と、千頭駅と井川駅を結ぶ「井川線」があります。大井川本線はSLが走る路線として人気があるのに対し(SLは整備等で臨時運休の場合あり)、井川線は「南アルプスあぷとライン」の愛称で呼ばれ、急勾配の斜面をアプト式という方式で登っていく小さな可愛らしい車両が人気です。
千頭駅から奥大井湖上駅まで、距離はそれほどないのですが、ゆっくりと走っていくので1時間以上かかります。この間はのんびりと車窓からの眺めを楽しみましょう。
途中の「アプトいちしろ駅」から「長島ダム駅」に向かう区間は急勾配のため、列車の最後尾に専用の電気機関車を付けて客車を押し上げていきます。アプトいちしろ駅では、この電気機関車を取り付ける珍しい作業を見ることができます。
大井川鐵道 奥大井湖上駅
コトコトと心地よく列車に揺られていくと、やがて長島ダムの建設によってできたダム湖、接岨湖が見えてきます。この湖を横断する橋の真ん中にあるのが「奥大井湖上駅」です。
列車を降りるとそこは湖の真上。駅の階段を登っていくとコテージがあり、休憩用のスペースになっています。週末には期間限定のカフェもオープンしています。
駅の両側には195mと286mの2本の赤い鉄橋が掛けられており、片方の橋を通って歩いて駅の対岸に向かうことができます。ちょっとだけ(?)急な階段を登り、湖を回り込んでいくと奥大井湖上駅の全景を見通すことができる展望所があります。
展望所からはこの絶景! 時間をかけてはるばるここまで来て良かったと心から思える瞬間です。
接岨峡温泉
奥大井湖上駅の周辺には期間限定で駅のカフェが営業している以外はお店もレストランもありません。そのため、ランチを食べるのであれば、奥大井湖上駅の次の接岨峡温泉駅まで移動する必要があります。約2キロ、徒歩約40分ほどの距離なので展望所からそのままハイキングするのも良いでしょう。
接岨峡温泉は静かな温泉地ですが、湯質が良く、地元の人にも親しまれている温泉です。接岨峡温泉会館では日帰り入浴ができるので、ハイキングの汗を温泉で流すのも良いでしょう。
温泉会館では食事をすることもできます。掛川牛のローストビーフや牛スジカレーなどの定番メニューのほか、夏限定の冷麺もあります。川根本町の名産である川根茶を使ったソフトクリームも人気です。
日本最高級の茶「川根茶」をテラスで味わう
夢のつり橋と奥大井湖上駅、2つの絶景を楽しんだあとは、茶畑に囲まれたテラス席で優雅にティータイムを過ごすのはいかがでしょうか。日本茶の名産地として知られる静岡県のなかでも川根本町で作られる「川根茶」は日本一良質な高級茶とされ、国内外の品評会で最高の評価を受けています。
収穫などの繁忙期を除き、いくつかの農園では茶畑の見学にも応じてもらえるほか、古民家やテラスなど、それぞれ趣向を凝らしたロケーションでお茶をいただくこともできます。
この日伺ったのは「相藤園」と「つちや農園」。いずれも多くの受賞歴を誇り、川根本町を代表する農園です。
相藤園では、改装したおしゃれな古民家で園主の相藤さんが直々にお茶を振る舞ってくれます。また、目の前を大井川が流れ、その向こうに大井川鐵道のSLを眺められる川床テラスも新設され、楽しみ方がますます広がっています(お茶体験プランは一人1,000円)。
つちや農園は、川根本町の中でも標高の高いエリアに位置し、「天空の茶園」と呼ばれています。茶畑を見下ろすような高台にテラスが設置されており、南アルプスの山々を眺め、鹿の鳴き声を聞きながらのんびりとティータイムを過ごすことができます(テラスでのお茶体験は一人3,000円)。
川根本町での茶畑めぐりは、茶農家のみなさんが直々に自慢のお茶を、それぞれ工夫をこらした最高のシチュエーションで提供してくれるのが魅力。絶景のロケーションで写真を撮るだけではなく、農園の方とコミュニケーションを取りながら本物の日本茶文化に触れたい方にとくにおすすめです。
名古屋から寸又峡「夢のつり橋」へのアクセス
クルマを利用する場合、名古屋ICから新東名高速の島田金谷ICまでが約1時間30分。島田金谷ICで高速を降りた後は、途中にある千頭駅付近までが約1時間、そこからさらに細い山道を約30分走らせると寸又峡温泉の駐車場に到着します。高速を降りたあとは1本道なので迷う心配はほとんどありませんが、千頭駅から寸又峡温泉までの区間、細い山道が続くので対向車とのすれ違いには注意が必要です。
公共交通機関を利用する場合、東海道新幹線「こだま」で名古屋駅から掛川駅まで移動し(約1時間)、掛川駅からJR東海道本線に乗り換えて金谷駅まで向かいます(約15分)。金谷駅では大井川鐵道の大井川本線に乗り換え、千頭駅まで約1時間15分。千頭駅からはバスで「寸又峡温泉入口バス停」まで約40分です。
おわりに
中部・東海エリアでも屈指の写真映えスポットとして人気の夢のつり橋。日本の秘境と呼ばれる場所だけあって、行くのは少し大変ですが、時間をかけて訪れるだけの価値のある絶景が待っています。大井川鐵道井川線での列車旅や川根茶を楽しむ茶畑テラス巡りと併せてぜひ訪れてみてください。