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【熊野古道伊勢路】天狗倉山と便石山に寄り道しつつ馬越峠を越える

熊野古道伊勢路は、2004年に世界遺産に登録された熊野古道のうちの一本で、伊勢神宮と熊野三山という日本の二大聖地を結んだ信仰の道です(※ 熊野三山巡りについてはこちらの記事もご参照ください)。

この伊勢路を通る馬越峠は、これぞ熊野古道という雰囲気を感じられる石畳が良く残り、熊野古道のハイキングコースとしてもっとも人気のあるコースの一つです。この記事では、天狗倉山と便石山という二つの絶景ポイントに立ち寄りつつ、馬越峠を越えていくルートの魅力を紹介します。

道の駅海山から馬越峠頂上へ

今回の行程では、「道の駅海山」の駐車場にクルマを停め、熊野古道の馬越峠を越えて尾鷲市街地に抜け、そこから路線バスで駐車場まで戻って来ました。道の駅海山から馬越峠の登り口までは徒歩で10分ほどの距離です。

道の駅海山の駐車場からスタート
馬越峠への登り口

馬越峠の看板を越え、交通量の多い国道から熊野古道に足を踏み入れると、すぐに雰囲気が一変し、江戸時代にタイムスリップしたような感覚に陥ります。真っ直ぐに伸びる太いヒノキの間を苔のむした石畳が敷きつめられた古道が続いていく様はとても美しく感動的!

登り口に入ってすぐのところから石畳が続く
旅人の安全を見守る夜泣き地蔵

この区間の石畳は江戸時代に紀州藩によって整備されたもの。約2.7mの紀州藩の籠の幅に合わせて設計されたため、当時の道にしては道幅が広く作られているそうです。

静かに石畳を歩いていくと江戸時代にタイムスリップしたような感覚に

石畳はただの飾りではなく、大雨によって道が流されてしまわないようにするための、雨量の多いこの地域ならではの工夫でした。2004年の台風21号による被害で新しく作られた国道42号が崩落し、通行止めになってしまった際も、馬越峠の石畳はびくともせず、災害ボランティアの方が徒歩で峠を越えたというエピソードが残っています。

生い茂るシダに包まれるように古道を進む
展望の開けた休憩スペースがある

時が止まったような古道の雰囲気に魅了されつつ、滑りやすい石畳に注意しながら30分ほど登っていくと、やがて周囲の山々が見渡せる開けた場所に出ます。ここにはベンチが置かれ、一息つけるようになっています。

頂上に近づくにつれて差し込む光が明るくなる
巨大な檜が地に這うように根を伸ばしている

休憩スペースからさらに20分ほど。ようやく標高325mの馬越峠の頂上に到着です。スタート地点となる道の駅海山の標高が17mなので、ここまで300mほどの標高差を登ってきたことになります。

馬越峠の頂上は木々に囲まれているため、残念ながらあまり眺望はありませんが、休憩できるベンチが多くあるのでしっかり休憩を取って体力を回復させましょう。

馬越峠「13/22」の標識が峠の頂上

馬越峠から天狗倉山へ

馬越峠の頂上からは、(1)そのまま熊野古道を進み尾鷲の市街地に降りていく、(2)左手にある天狗倉山を目指す、(3)右手にある便石山を目指す、という選択肢があります。世界遺産の熊野古道のルートからは外れてしまいますが、(2)と(3)はとても気持ち良い登山と絶景の眺望が楽しめます。体力に余裕があれば、ぜひ寄り道してみましょう。

馬越峠から天狗倉山を目指す道のり
「きびしい登り坂」が続く

今回は、まず、左手にある標高522mの天狗倉山を目指します。天狗倉山の登山道に入ると、馬越峠の石畳道とは雰囲気が変わり、木の根が這う山道を進むことになります。案内板にも馬越峠頂上から「約30分」と書かれている通り、それほどの距離はありませんが、200mの標高差を一気に登る必要があるため、それなりにハードな山歩きになります。

見上げるような巨大な大岩にびっくり!
大岩にはしっかりした金属製の梯子がかかる

かなりの急勾配。息を切らして登っていくと、やがて目線の先に巨大な岩が見えてきます。この大岩が天狗倉山の頂上です。登ってきた方向から裏側に回ると金属製の梯子がかけられており、岩の上に登ることができます。

大岩の上には思いのほか広いスペースが広がっている
役行者を祀る祠

梯子の下には、日本の修験道の開祖とされる役行者(えんのぎょうじゃ)を祀る祠があります。梯子を登ると、10人ほどであれば余裕で寛げそうなくらい広いスペースがあり、控えめに「天狗倉山」の山頂プレートが置かれています。目の前の木々が視界を遮っているため、眺望は大岩の下の岩場に設置されたコンパスのあたりの方が開けています。

天狗倉山山頂付近から望む尾鷲市街地と熊野灘

馬越峠頂上から便石山へ

天狗倉山山頂からふたたび馬越峠に戻り、今度はもう一つの便石山を目指します。便石山の標高は約600m(正確には598.9m)。馬越峠からは一度、山を下っていき、そこから登りはじめる形になるので、天狗倉山に向かうよりも長い道のりになります。

きれいに整備された登山道
これから挑む便石山の全景

馬越峠から降りきったところからは、これから挑む便石山の全景が望めます。ここからの道のり、きれいに整備された階段をひたすら登っていくので、それほど歩きづらさはないのですが、距離が長いのでなかなか大変でした。

頂上に近づくにつれて傾斜は急になっていく
頂上にはとくに何もない

山頂に近づくといくつかの大きな岩が置かれており、そこを抜けるとようやく山頂です。馬越峠から便石山山頂までの所要時間は、登りが約2時間、帰りの下りが約1時間です。

便石山の山頂には地味なプレートが置かれているだけですが、ここからが本番。山頂からさらに数分、奥に進んだ先に絶景スポット「象の背」があります。象の背からは、先ほど登ってきたばかりの天狗倉山、そして尾鷲市街地や穏やかな熊野灘まで、すべてが一望できます。

象の背はSNS映え間違いなしの絶景ポイント!

巨大な岩が山からせり出した「象の背」は、色も形もまさに象の背中にそっくり。象の背に立って下界の絶景を見下ろす・・・数ある日本の山の絶景スポットのなかでも、これほどの映え写真を撮れるポイントはそうありません! 思う存分、気の済むまで記念撮影を楽しんでください(※高所恐怖症の方だと足がすくむくらいの高さを感じます)。

馬越峠から尾鷲市内へ

象の背からの絶景でテンションが上りきったところで、便石山を下り、三度目の馬越峠に戻ります。ここからの帰路の選択肢として、朝登ってきた馬越峠を引き返し、海山に戻るパターンと、熊野古道を進み尾鷲市街に下りるパターンがあります。

桜地蔵
馬越峠展望台から望む尾鷲市街地

今回は熊野古道を進み、尾鷲市街を目指します。朝登ってきた北側の登りに比べ、南側の下りは傾斜がいくぶん緩やかに感じますが、水が湧き出し、石畳が濡れている区間もあり、滑りやすいので注意が必要です。馬越峠から20分ほど降りていくと、尾鷲の市街地を望める展望台があり、最後の休憩を取ることができます。

馬越峠の展望台、ここまで来るとゴールはすぐそこ

展望台を過ぎるとすぐに馬越峠の南側の登り口である馬越公園に到着します。この馬越公園周辺には「山帰来」という宿泊施設を兼ねたおしゃれな山小屋風のカフェがあるのですが、2022年10月現在、カフェ営業は休業中とのことでした。

県尾鷲庁舎前から道の駅海山へ

尾鷲市街からクルマを停めた道の駅 海山までは、三重交通の路線バスを利用して戻ります。

馬越公園から三重県尾鷲庁舎の横にある「県尾鷲庁舎前」バス停までは約2キロ。予定していたバスを逃すと1時間以上待つこともあり、しかも周辺には時間を潰せる場所があまりありません。三重交通の最新の時刻表を確認した上で、計画的に移動するようにしてください。

三重県の尾鷲庁舎
バス停から望む天狗倉山

バスは「紀伊長島駅行き」「島勝行き」「松阪駅前行き」「松阪中央病行き」のいずれかに乗り、一つ先の「鷲毛」バス停で下車してください。料金は320円で、馬越峠の登り口の目の前で降りることができます。

所要時間の目安

道の駅海山 →(約10分)馬越峠登り口 →(約50分)馬越峠頂上 →(約30分)天狗倉山頂上 →(約20分)馬越峠頂上 →(約120分)便石山山頂・象の背 →(約60分)馬越峠頂上 →(約40分)馬越公園 →(約30分)県尾鷲庁舎バス停 →(約10分)鷲毛バス停→ 道の駅海山

おわりに

名古屋から馬越峠ハイキングの拠点になる道の駅海山までクルマで向かう場合、東名阪自動車道から伊勢自動車道、紀勢自動車道、熊野尾鷲道路を通り、海山ICで降りてください。海山ICから道の駅海山まではすぐで、全体の所要時間は2時間〜2時間30分ほどです。

今回紹介した馬越峠のハイキングコース、すべてを巡ろうとすると移動距離も長く、丸一日がかりの行程になりますが、世界遺産熊野古道の雰囲気を存分に味わいつつ、大自然の絶景も楽しめるのでおすすめです。途中、自動販売機などはありませんので、しっかりと水分を用意し、すべりにくい靴(できれば登山靴)で訪れてください。

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