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【東海道関宿を歩く】名古屋から行く東海道関宿一日観光まとめ

日本の歴史を感じる旅をしたいのであれば、かつての日本人が旅の途中に宿泊した歴史ある宿場町を訪れるのが良いでしょう。日本で、江戸時代の宿場町の姿がもっとも保存されているのが東海道の関宿です。関宿に立ち入ると、江戸時代にタイムスリップしたかのような感覚に陥ります。

東海道関宿の歴史と現在

東京~京都・大阪間を「東海道」新幹線で移動するのは日本旅行の醍醐味であり、多くの観光客が利用しています。この、東京の日本橋にはじまり京都の三条大橋まで続く492キロの東海道は、江戸時代に整備された五街道と呼ばれる道路のひとつで、最も重要なルートのひとつでした。現在は新幹線で2時間30分ほどで移動できる東京〜京都間、当時のひとは徒歩で往来しました。かかった時間は片道13日〜15日と言われています。

浮世絵に描かれた関宿の周辺
浮世絵に描かれた関本陣

街道の整備とあわせて旅人が休むための宿場町の整備も進みました。東海道には53の宿場町があり、「東海道五十三次」と呼ばれました。宿場町の風景は歌川広重の浮世絵にも描かれ、有名です。
東海道はその後も日本の基幹交通として発展を続け、多くの宿場町も近代化にともなって様変わりしました。そんななか、古くから町並みの保存に取り組み、当時の雰囲気を残している数少ない宿場町が東海道関宿です。中山道の妻籠宿や馬籠宿と並び、江戸時代の宿場町の雰囲気を感じられる場として、人気があります。

関宿の東端にある⿃居
歴史ある町並が続く

関宿へのアクセス情報

JR関駅と観光案内所

名古屋から行く場合、JR関西本線で亀山まで行き、そこから同じく関西本線を乗り継いで次の駅が関駅。亀山までは快速で1時間ほど、亀山から関は10分もかからずに到着します。料金は1170円です。
なお、忍者で有名な伊賀上野駅には、関駅からそのままJR関西本線に乗れば40分ほどで到着します。
また、高速道路の便もよく、名古屋市内からであれば車でも1時間ほどで行くことができるため、レンタカーの利用もおすすめ。車であれば関宿だけでなく、周辺にある亀山城や能褒野神社にも足を伸ばしてみると良いでしょう。
なお、京都から行く場合、JR琵琶湖線で草津へ、そこからJR草津線で柘植へ、さらにJR関西本線で関に到着します。料金は1340円。乗車時間は1時間20分ほどだが乗り継ぎのタイミング次第でもう少し時間がかかります。

関宿の主な⾒どころ

関宿の範囲は東西約1.8キロメートルに渡ります。JR関駅から北に向かい、町並みの残る街道に出たらまずは東の端にある「東の追分」まで行き、そこから「西の追分」に向かって1.8キロの道を歩いてみましょう。半日あれば十分に関宿を満喫することができます。後述する関の山会館、関まちなみ資料館、関宿旅籠玉屋歴史資料館に入るため、3館共通の500円のチケットを購入することをおすすめします。

関の⼭⾞会館

関の山車会館は2019年にオープンした新しい施設。毎年7月に行われる「関宿祇園夏まつり」に使われる山車が展示されています。高山祭りの「山車」は「だし」と読みますが、関宿では「やま」と読みます。日本には、「一生懸命やってできる限界」を意味する「関の山」という表現があります。関の山車は大きく、これ以上大きくなったら街道を通れないほど大きかったことから、この表現が生れました。

彫刻が美しい⼭⾞
かつて使われていた神輿

7⽉に⾏われる関宿祇園夏まつりの様⼦は下の動画で知ることができます。

関まちなみ資料館

関まちなみ資料館は、関宿のちょうど中腹あたりにあります。伝統的な民家を資料館として公開している施設で、関宿の町並みの歴史を知ることができます。天井の低さが印象的なこの建物は、狭いスペースを有効に活用するため、階段が収納スペースとして設計されているなど、当時の人々の生活の工夫が感じられ興味深い。

箱階段
2階の様⼦

百六⾥庭・眺関亭

関まちなみ資料館のすぐ先には百六里庭という小さな公園があり、そこに眺関亭という関宿を見渡せる展望施設があります。無料で入れるのでぜひ立ち寄ってみてください。
ちなみに、「里(り)」は古い日本の単位で、約3.9キロメートルに相当します。百六里庭という名前は、関宿が江戸(東京)から106里離れていたことに由来します。

眺関亭からの眺め

関宿旅籠⽟屋歴史資料館

眺関亭を出て左手に進むと、すぐに江戸時代の宿である旅籠、「玉屋」が資料館として公開されています。江戸時代の日本の旅人は「草鞋」という藁で作った簡素な靴を履いていましたが、足が汚れるため、宿に上がる際は桶で足を洗っていました。その桶をはじめ、当時の道具類が展示されています。

⾜を洗うための桶
⾷事の⽤意をするための⼟間

通りに面した正面はそれほどの広さではありませんが、中に入ってみると奥行きの長さに驚かされます。急な階段を登った二階には、江戸時代の旅人の寝室や食堂が再現されています。

畳の上に並べられた⾷器
旅⼈が使った布団

関地蔵院

東の追分をスタートして、関宿を西に向かって横断していくと、やがて左手に大きなお堂、関地蔵院が見えてきます。祀られている地蔵は日本最古とされ、古くから東海道を旅する人々の信仰を集めてきました。修繕後の開眼供養(仏に魂を入れ込む儀式のこと)には、日本史上もっとも有名な僧のひとり、一休が関わったと言われています。国の重要文化財に指定されている赤く塗られた鐘楼が美しい。

鐘楼内の鐘
⾚⾊の鐘楼

関宿で楽しむ⾷

会津屋

関地蔵院の境内の向かいには、会津屋というお食事処があります。江戸時代には関宿を代表する旅籠のひとつでした。歴史を感じる看板と宿場町の雰囲気に馴染んだ外観をみると、思わず店内をのぞいてみたくなります。日本の伝統的な炊き込みご飯である山菜おこわは昔ながらの釜を使って炊き上げられていて、おすすめです。

店内の様⼦
1500円の定⾷

深川屋の「関の⼾」

大名や多くの旅人が往来した宿場町では、名物になる和菓子も生れました。代表的な和菓子屋が深川屋で、忍者の末裔、服部保重(はっとりやすしげ)によって17世紀前半に創業されました。当時、京都の御所でも茶菓子として提供されたという「関の戸」は、いまも江戸時代と同じ製法で作られているそうです。

店内の様⼦
関の⼾

前⽥屋の「志ら⽟」

深川屋の「関の戸」と並んで有名なのが前田屋の「志ら玉」です。抑えられた甘さの餡がお餅のような生地に包まれていて美味しい。「関の戸」も「志ら玉」もどちらも1個100円ほどで、1個から購入することができるので、ぜひ両方食べてみてくださいね。

⼀枚板の看板
志ら⽟

伊勢茶問屋  かねき伊藤彦市商店

先に紹介した和菓子屋「深川屋」を出るとすぐそばにあるのが、慶応元年(1865年)創業の伊勢茶問屋「かねき伊藤彦市商店」。シンプルで上品な店内には、古くから伝わる茶箱やこだわりの商品が並び、古きと新しきが調和した素敵な空間になっています。

店内に並ぶ茶箱。防湿、防虫、防臭と優れた機能を持つ先人の知恵。

百年乃茶
店内から見える町並み

お店のおすすめは、「百年乃茶」。かつて東海道の難所とされた鈴鹿峠のふもとに広がる沓掛(くつかけ)で取れるお茶です。樹齢100年を超える茶の樹から取れた茶葉で、時を越えて守り続けられるお茶のストーリーに心も温まります。

和カフェ gute(グーテ)

クマの形をしたモナカ
歩き疲れた時の一休みにもおすすめ

関宿では老舗と肩を並べて、新しいお店も続々とオープン中。和カフェguteでは、クマを模ったキュートなモナカが老若男女の心を射止めています。

東海道関宿周辺の主な観光スポット

⻲⼭城

亀山城の多門櫓

時間に余裕があるなら、関宿のお隣の宿場町「亀山宿」に立ち寄って、当時の旅路を辿ってみるのも良いかもしれません。関宿から車で10分ほどの亀山宿は、亀山城を中心とした城下町でもあったため、石垣や堀など、城下町としての面影も感じることができます。

亀山神社
旧舘家(たちけ)住宅

能褒野神社

木漏れ日が印象的な境内
広大な敷地に広がる竹藪

史跡に興味がある方は、「能褒野神社」に足を運ぶのはいかがでしょうか。緑豊かな境内には、ヤマトタケルノミコト(日本武尊)が眠るとされる前方後円墳があります。

伊賀上野

伊賀流忍者博物館
伊賀上野城

関宿から30分ほど車を走らせると、「伊賀上野」があります。忍びの国と呼ばれるこの町は、忍者に関する博物館やショーの他、美しい城を楽しめる場所です。

俳聖殿
参拝客で賑わう伊賀上野天満宮

まとめ

高山、名古屋の有松、中山道の妻籠宿・馬籠宿など、日本の古い町並みを堪能できる場所は数多くありますが、これほどのスケールで江戸時代の町並みが保存されている場所はめずらしいです。関宿の人々がここで生活を続けながら厳しい建築規制を守り、この町並みを維持してきたことに敬意を払いつつ、江戸時代へのタイムスリップを楽しむと良いでしょう。

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