| セントリップ・ジャパン編集部

【南信州豊丘村】農家民宿ひがしで本物の農泊を体験し最高のジビエを味わう

長野県の南部に位置する豊丘村は一年を通じて様々な果物が収穫され、秋には松茸の名産地としても知られています。中央アルプスと伊那谷の全容を見晴らせる福島てっぺん公園からの絶景も豊丘村の自慢のひとつです。

そんな豊丘村には、「農家民宿ひがし」という、とてもユニークな宿があります。この宿に泊まれる客は1日1組のみ。宿泊する建物は築100年を超える農村の古民家で、料理は猟師でもあるオーナーの壬生さんが鹿肉を中心とした最高のジビエを提供してくれます。滞在中のプランは完全にオーダーメイドで、1日1組の客のために、お客さんの要望と季節にあわせて、最高の田舎体験を提案してくれます。

この記事では、そんな農家民宿ひがしでの滞在を子どもと一緒に楽しむ秋のプランをご紹介します。

農家民宿ひがしへチェックイン

農家民宿ひがしは、中央道の飯田ICからクルマで約30分(座光寺スマートICから約20分)、天竜川沿いの低地に広がる豊丘村の中心部から高台に向かって伸びる村道の途中にポツンと建っています。お風呂やトイレなどの水周りがリフォームされている以外は、築100年以上経つ古民家がほとんどそのまま、宿泊施設として利用されています。

築100年以上の古民家
シンボルの囲炉裏の周りでは料理が提供される

入り口の引き戸を開け、土間を通って部屋にあがるとすぐに囲炉裏があります。囲炉裏のある部屋も含め、襖に区切られた空間がぜんぶで6部屋。さらに縁側もあるため、外観からイメージするよりも内部の空間が広くて驚かされます。

日本の古い農村での生活がリアルに体験できる
裏手には棚田が広がる

再び家の前に出てみると、目の前には畑と小川があり、裏手には棚田があり、そしてそれらを取り囲むように山々が並ぶ。そんな日本昔話で描かれるような本物の農家に滞在できるのが、農家民宿ひがしの最大の魅力です。

熊五郎との散歩と栗拾い

チェックインを済ませ、宿に荷物を置いたら早速、アクティビティを体験しましょう。この日は、宿の看板犬である熊五郎との散歩からスタートです。

猟犬でもある熊五郎
どこか懐かしさを感じる日本の原風景を横目に進む

「たかが犬の散歩」と侮るなかれ。熊五郎は体重25キロほどもある逞しい猟犬。元々は捨て犬だったところを3年前に壬生さんが引き取って一緒に暮らしているそうです。

ふだんから野山を駆け回っている猟犬だけに散歩の運動量も豊富! ペースが早く、子どもたちも走って後ろから付いていくのがやっと。30分ほどの散歩でクタクタになります。でも、秋空の下、実りを迎えた田畑を眺めながらの散歩はとても心地よい時間でした。

壬生さんと熊五郎のあとに続く
慣れない山道で追いかけるのも大変!

散歩中の秋だけのスペシャルな楽しみは栗拾い。途中、いくつか秘密の栗拾いのポイントに案内してもらえます。この日もたくさんの栗を見つけることができました。トゲトゲの栗のイガを注意深くむき、中から栗を慎重に取り出していきます。なかにはビックリするくらい大きな栗を拾えることも。

散歩道の途中で栗拾いポイントを案内してもらえる
ちょうど食べごろ?

「栗を拾っておしまい」にならないのが農家民宿ひがしの体験メニューのすごいところ。散歩を終えて民宿に戻るとすぐに栗むきがはじまります。

大小いろんな栗が拾えた
散歩を終えて栗の皮むきを教わる

虫のついている栗の見分け方や皮むきバサミの使い方を教えてもらいながら、みんなで皮むき。子どもたちにとっては初めての経験。コツをつかむまではなかなか大変で、剥いているうちに半分くらいの大きさになってしまうことも・・・。むいた栗は夕食時に栗ご飯として調理してもらえます。さっき自分たちで拾ったばかりの栗で栗ご飯を食べられるなんて最高の贅沢ですね!

サワガニ獲り

壬生さんの後に続いて水路を進む

栗むきに続いてはサワガニ獲りへ出かけましょう。農家民宿ひがしの目の前には野菜畑が広がっており、その畑の横には緩やかな小川が流れています。澄んだ水のなかには生きものがいっぱい。大きな石をどけてみると、石の裏からカサカサとサワガニが逃げ出していきます。

大きな石をどけてみると・・・
サワガニを見つけた!

この日は小一時間の川遊びでたくさんのサワガニを捕まえることができました。清流ならではの生きものなので、すぐにリリース。子どもたちはちょっと名残惜しそうでしたが、ふだんできない川遊びに大興奮。服もびっしょり!

野菜の収穫体験

色々な種類の野菜がすべて無農薬で栽培されている

サワガニとたっぷり遊んだあとは、小川の横に広がる畑で野菜の収穫体験。農家民宿ひがしでは、自前の農園で様々な野菜を無農薬で栽培しています。

それぞれの野菜の収穫時を教えてもらう
めずらしい白ナスも

食べごろを迎えた旬の野菜を教えてもらいながら、みんなで一つ一つ大事に摘み取っていきます。この日収穫したのは、ナス、オクラ、トマト、ピーマン。収穫した野菜はこのあといただくことができるとのことなので楽しみ!

囲炉裏を囲んでの夕食

山に川に畑に・・・と農村でのアクティビティを思いっきり満喫したあとは、宿にもどってひと休み。子どもたちは、家の中を走り回ったり、裏の田んぼでイナゴを探したり、思い思いに古民家での時間を楽しみます。この間、壬生さんが夕食の支度を進めてくれます。

アマゴの炉端焼き

囲炉裏の炭に火が点けられ、時間をかけてゆっくりアマゴが焼かれていきます。少しずつ香ばしい匂いが立ち上ると、とても食欲がそそられます。

鹿肉のマリネ
先ほど収穫したばかりの野菜が並ぶ

囲炉裏の周りに並べられていく食材は、鹿肉に豚肉、川魚、野菜、山菜、キノコなどじつに多彩。壬生さんがすべてたった一人で(!)手際よく調理してくれます。

炭火で焼く豚肉もとても美味しい
少し冷えたカラダに染み入るキノコ汁

どれも美味しいのですが、特筆すべきは鹿肉のジビエ。自らが狩猟から調理まで一貫して携わり、鹿肉を熟知している壬生さんだからこその最高のジビエ料理を提供してもらえます。この日のジビエは、鹿肉のマリネ、鹿肉のタタキに、鹿肉のスペアリブ。ジビエ特有の臭みをまったく感じることなく、美味しくいただきました。

絶品の鹿肉のタタキ

シメのご飯は昼間の散歩で拾った栗を炊き込んだ栗ご飯。これがまた美味しい! お腹がいっぱいだけれど、まだまだ食べられてしまう。そんな充実の夕食でした。

脂ののった牡鹿肉のスペアリブ
散歩途中に拾った栗で炊いた栗ご飯

大満足の夕食のあと、お風呂に入ると子どもたちはもう眠そう。秋の虫の音を聞きながら、早めの床に就きました。

朝食

チェックアウト前のアクティビティに備えて翌日は少し早めのスタート。早朝から朝食の用意をしてくれる壬生さんに感謝です。朝食は野菜中心のヘルシーなメニューながら、ボリュームは満点でした。昨日、みんなで収穫したナスの煮浸しも美味しい!

野菜中心のヘルシーな朝食

熊五郎と成田不動滝へ

朝食を済ませたらふたたび熊五郎と散歩へ。今日は少し遠回りして成田不動滝を目指す1時間程度の散歩コースです。相変わらずのハイペースで邁進する熊五郎にがんばって付いていきながら、所々、散歩途中の農村の風景を楽しみます。

秋晴れの心地よい散歩道
この日も熊五郎とともにスタート

ちょうど収穫期を迎えており、黄金色に輝く田んぼの風景がとても美しく感じられました。

収穫期を迎えた農村の美しい風景が目を引く

この水田があったあたり、かつては川が流れていたようで、その川の流れを昔の人が難工事の末に変え、稲作地を確保したそうです。狭い山間の地で農業を営んだ先人の苦労が忍ばれます。そして、その工事の結果、人工的に作られたのが目指す成田不動滝です。

急な斜面を降りると視界の先に一筋の滝が目に入る

成田不動滝は落差12mほどの滝で、それほど大きな滝ではありませんが、勾配の急な斜面を降りていった先に一直線に流れ落ちる姿はとても美しく、神秘的な雰囲気さえ漂っていました。

岩をよじ登り・・・
川を超え・・・

斜面を降り、滝壺までの100m足らずの区間がなかなかの難所。岩をよじ登り、川を飛び越え、少しずつ、滝の方へ近づいていきます。子どもはとても楽しそう。足場は悪いものの、滝壺周辺の流れもそれほど急ではなく、滝に直接手を触れられるところまで近づくことができます。

滝のもとへと近づいていく
滝の水に触れることができた!

おわりに

農家民宿ひがしのチェックアウト時間は11:00。1日1組限定だからこそできるきめ細やかな対応で、ここでしかできない農泊体験を全力サポートしてもらえ、しかも最高のジビエを味わえるというという点で、大人も子どもも大満足の1泊2日となりました。

料金は4人宿泊の場合、1人1泊2食付きで8,000円。宴会プランに料理をアップグレードした場合でも一人あたり1,000円の追加のみで、記事で紹介した体験メニューはすべて宿泊料金に含まれています(農泊体験ひがしには季節によって様々な体験メニューがあり、有料のものもあります)。

1日1組限定ということで、夏季シーズンなどは予約が難しいタイミングもありますが、ジビエに舌鼓を打ちつつ、本物の農泊体験をしたいのであれば、早めに計画を立て、豊丘村を目指してみてはいかがでしょうか? 豊丘村観光の魅力についてはこちらの記事もご参照ください

温和な表情で民宿の案内をしてくれるオーナーの壬生紘彰さん

最後に、少し観光目線とは異なる話になってしまいますが、日本では、自然条件の変化や狩猟者の減少によって、鹿の生息地が広まり、個体数も増えています。その結果、農作物への被害が増えたことで、鹿は「害獣」として駆除されていますが、駆除された鹿の約9割は廃棄処分されているそうです。

農家民宿ひがしのオーナーの壬生さんは、猟師として生命のやり取りをする場に赴く立場から、少しでも無為に廃棄されてしまう鹿を減らすため、ジビエ事業や情報発信にも積極的に取り組んでいます。農家民宿ひがしでの滞在は、美味しいジビエ料理を通じて、自然と人間の付き合い方についてあらためて考えるきっかけになるかもしれません。

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